# 『生存確認』

短編・7分・ドラマ。「シガレット」とは無関係のサンプル脚本。
作法は [00-short-film-craft.md](./00-short-film-craft.md) を参照。

一行で言うと: **毎朝押すはずの「無事です」ボタンを、老人が一日だけ押さない。誰が来るか
確かめるために。**

## 人物

- **茂**（78）。独居。元・中学の理科教師。何でも実験にする癖。
- **佳代**（34）。市の地域包括支援センター職員。早口。
- **健一**（46）。茂の息子。東京。声のみ。

## 序（0:00〜2:45）

○茂の家・台所（朝）

　壁に白いプラスチックの箱。緑のボタンが一つ。その上に貼った紙、手書きで「毎朝８時までに押す」。デジタル時計、7:58。
　茂、ボタンの前に立っている。指を出す。
　7:59。指が止まる。
　8:00。
　押さない。
　茂、椅子に座る。急須に湯を注ぐ。落ち着いている。むしろ、楽しそう。

○同・居間

　茂、押入れから白いワイシャツを出す。アイロン台を立てる。丁寧に当てる。着る。襟を直す。
　時計、8:31。
　窓の外。誰も来ない。

茂「（時計に）二時間以内、って書いてあっただろ」

　箪笥の上の説明書を取って、確かめる。「異常検知から二時間以内に訪問」。頷く。

○同・玄関前・道（外）

　空の道。郵便配達のバイクが来る。茂、窓から半身。バイクは止まらずに行く。
　茂、少しだけ、がっかりする。

○同・台所

　9:12。茂、朝食を作る。味噌汁、ご飯、焼き魚、漬物。卓に並べる。箸を置く。
　食べない。
　座って、卓の向こうの窓を見ている。ワイシャツ姿で。

## 破（2:45〜5:35）

○同・台所

　9:47。車の音。
　茂、跳ねるように窓へ。白い軽自動車。ドアに市のマグネット。
　降りてくる佳代、電話をしながら早足。
　茂、固まる。来た。来たのだが。

佳代（外）「茂さーん！　いらっしゃいますかー！」

　茂、玄関へ一歩。止まる。元気な顔で出ていく自分を想像する。実験が台無しになる。それに、みっともない。
　キーボックスの音。鍵が回る。
　茂、押入れに入る。襖を閉める。

○同・居間〜台所

　佳代、入ってくる。

佳代「茂さん？　センターの安藤です。ボタン、押されてなかったので」

　静か。
　卓の上。手をつけていない朝食。味噌汁の湯気はもう無い。
　佳代の顔が変わる。

佳代「茂さん！」

　トイレ。風呂場。寝室。声が大きくなっていく。
　（押入れの中。暗闇で膝を抱えた茂。襖の隙間から、行ったり来たりする佳代の足）
　佳代、電話をかける。

佳代「安藤です。茂さん、応答なし。朝食に手つけてないです。……玄関は掛かってました。……救急？　いや、まだ。探します」

　（押入れ。「救急」で茂の顔色が変わる。今出れば止まる。出ない）

○同・居間

　佳代、電話台の横の古い住所録を開く。「け」のページの端が折れている。「健一」に下線。何度も引いた跡。
　佳代、掛ける。

佳代「もしもし、茂さんのご長男の、健一さんの携帯でしょうか。○○市地域包括支援センターの安藤と申します。落ち着いて聞いてください」

　（押入れ。茂の目が開く。四年ぶりに聞く名前）

佳代「ボタンが押されていなくて、今お宅にいるんですが、お姿が見えなくて。はい。鍵は掛かっていました。……携帯？　お持ちなんですね。あ、掛けていただけますか。私、探しながら聞いてますので」

　佳代、スピーカーにして卓に置き、寝室へ。

## 急（5:35〜7:00）

○同・居間・押入れ

　静寂。
　茂の胸ポケットが震える。着信音。
　茂、慌てて胸を押さえる。止まらない。
　襖の向こうで、佳代の足が止まる。
　襖が開く。
　光。膝を抱えた、白ワイシャツの茂。手の中で鳴り続ける携帯。画面に「健一」。
　佳代、無言。
　茂、無言。
　携帯だけが鳴っている。

佳代「……出てください」

　茂、出る。

茂「……はい。生きてます」

　電話の向こう、長い沈黙。それから、笑ったのか息を吐いたのか分からない音。

健一（声）「なんで押さなかったんだよ」
茂「押したら、来ないだろ」

　間。

健一（声）「……押してたから、掛けなかったんだよ」

　茂、何か言おうとして、言えない。
　佳代、卓の朝食を見て、大きく息を吐く。座る。勝手に味噌汁を飲む。冷たい。飲む。

○同・台所（翌朝）

　7:59。
　ボタン。茂の指。
　8:00。押す。緑のランプが点く。
　そのすぐ後ろ、卓の上の携帯が光って、鳴りはじめる。
　茂、ランプを見る。携帯を見る。
　ランプは点いたまま。携帯は鳴ったまま。
　暗転。

## どこで何を使ったか

- **5秒の掴み**は「押さない指」。押すべきボタンを押さない老人で、観客は「なぜ」を持つ。
  説明はしない。アイロンを当てる動作（シャレード）で、来客を待っていることだけ渡す。
- **目標と障害**。茂の目標は「誰が来るか確かめる」。障害は、来たら来たで元気な姿を見せなければ
  ならないこと。だから隠れる。**善意の行動が事態を悪化させる**のが破の3段。名前を呼ばれる、
  朝食で顔色が変わる、「救急」の語、息子への電話。一段ごとに出ていくコストが上がる。
- **カセ**は五つ重ねてある。時間（二時間）、掟（毎朝8時）、秘密（隠れている）、
  誤解（倒れたと思われている）、人間関係（四年ぶりの息子）。
- **反転**は「押してたから、掛けなかったんだよ」の一行。前半は「誰も来ない老人の話」に見えて、
  実は「無事の合図が、電話を要らなくしていた話」だった。守るための仕組みが孤立の仕組みだった。
- **落ち**は台詞ではなく画。緑のランプと、鳴る携帯。機械の生存確認と人間の生存確認が同じ
  フレームに並ぶ。「はい、生きてます」は電話への答えだが、ボタンへの答えでもある。
- **規模**は1軒、画面に出る人物2人、声だけ1人。口を見せる台詞は12行ほど。息子はリップシンク不要。
